ASKA new album を聴く。01.「FUKUOKA」
ASKAさんの new album 『Too many people』が届いてからというものの、日毎、全身にエネルギーがみなぎってくるのを感じる。
電流が走ったかのような、衝撃。
こんな感情がまだ自分に残っていたのかというほどの、心の動き。
眠っていた細胞が伸びをしながら起きてきたかのような、心地良さ。
もしかしてこれはとんでもないアルバムなんじゃないか?と言ったら、笑われるだろうか。
今頃気付いたのか、と。
全くミュージシャンASKAには圧倒されっ放しだ。
その想いが聴くほどに膨らんできて、感情の波にあっぷあっぷと溺れそうになっているので、
この音楽の前にどんな言葉もいらないことは百も承知で、一曲ずつ思い浮かぶことをとにかく綴っていきたい。
前回も書いたように、
ASKAさんがとにかく歌を歌い続けている、
アルバム発売までこぎつけた。
そのことが、まず高い高いハードルのように思えていて、どんなアルバムが出来上がるのか、ということに関してはそう突っ込んで考えていなかった。
ミュージシャンASKAにがっかりさせられたことはなく、今回もどんな歌が生まれていても、それなりに今のASKAさんを表しているだろう、とただ楽しみにしていただけだ。
アルバムの制作途中で、ASKAさんはASKAさんとして普通にその時に一番と思える作品を創ろうとしている、そう気付いて、もちろんクオリティーも期待できるものだろう、と考え直したものの、
その後の逮捕、勾留、不起訴処分の流れで、もう感情や心の準備はグッチャグチャになってしまっていた。
しばらく乗っていなかったのに、いきなり世界初の命綱のみのジェットコースターに乗っているかのような、そんな気分だった。
もしかしてアルバム発売は白紙、もしくは長期にわたる延期となるのかもしれない。
そして何より、ASKAさんの心身の状態を案じていた。
そして釈放わずか5日後、クリスマスにYouTubeで発表された『FUKUOKA』。
不起訴処分とはいえ、20日間にも及ぶ勾留、年内の発表は当然無理だろう。
そんな状態からの展開がドラマティック過ぎて、曲が流れると同時に、こらえていたものが溢れ出るのを止めることはできなかった。
思い起こせば、
9月19日。
そんななか、ギターで柔らかくつま弾く感じの曲が生まれました。
アルバムには必要な曲のような気もしていますので、何とか歌詞を完成させ、歌入れに突入したいと考えています。
そうなると、並べた楽曲のなかで1曲外さなくてはならない曲がでてきます。
今、揃っている曲はとても気に入っていますが、入れ替えをして12曲入りになるのか、それとも、更に加えて13曲になるのか、非常に難しいところです。
おはよう。 - ASKA_burnishstone’s diary
と、アルバム制作中に出来た『FUKUOKA』。
ASKAさんがその時自然にギターを爪弾き、自然に生まれたであろうメロディー。
それからすぐ、ASKAさんの想いそのままを歌詞に込めた。
その歌詞によって、『FUKUOKA』は、ASKAさんの今の心情を表すと同時に普遍的なテーマとも繋がり、待っていたファンだけではない多くの人々の心に響いたように思う。
9月25日
すべての録音が終わりました。
最終楽曲、「FUKUOKA」
今回の楽曲のなかでは、いちばん薄い編成でしたが、アルバムの中では、最も意味を放つ楽曲になったと思います。
様々な障害の中、仲間と故郷、福岡に助けられました。歌は、感情を最大に優先して5回ほどのテイクで録り終えました。
ただいま。 - ASKA_burnishstone’s diary
たった4分ちょっとの歌に、映画一本分、長編小説一冊分ほどの物語が表現されている。
その表現の広がりは無限にも感じる。
シンプルでありながら、ここまでの深み、奥行きを出せるのは、天賦の才によるものなのだろうか。
10月10日
13曲目にできた「FUKUOKA」は、ピアノとガットギターだけの編成です。 「ギターでつま弾く感じの曲」と、お伝えしたように、澄み渡るサウンドになりました。 歌詞の中で「僕のニューシネマパラダイス」と、いう一節があります。 これは、映画「ニューシネマパラダイス」のことです。この映画は幼い主人公が、やがて青年になり、恋をし、そして中年になり、老人となって行く人生のドラマを描いたものです。 映画も素晴らしいのですが、挿入されたテーマ曲が心に残ります。とにかく美しい。「FUKUOKA」のイントロでは、その「ニューシネマパラダイス」を、意識したメロディを奏でてあります。イントロだけで、チカちゃんは2時間費やしました。アルバムの入り口を見事に果たしてくれるメロディだと思います。
明日から、また始まります。 - ASKA_burnishstone’s diary
確かに映画、その挿入歌を意識したのであろう。この1988年に公開されたイタリアの映画は、サントラも大好きで何度も観て聴いてはいるが、意識したとはいえ当然全く別の音楽で、すぐには結びつかなかった。でも底に流れる精神は共通するところがある、そう感じた。
表面的には違った形でも、心の同じ場所、琴線に触れるようで、何十年も前にこの映画を観た時と、今『FUKUOKA』を聴いて感じるものが、重なる部分のあることに驚かされる。
淡々と制作過程を伝えてくれている、ASKAさん。たったの2時間であの素晴らしいイントロを仕上げる、澤近さん。この二人の才能の融合は本当の名曲を生んだ。
10月8日
先日、完成した「FUKUOKA」ですが、どうしてもガットギターを入れたくなり、急遽、移動、そしてスタジオに飛び込みレコーディングをしました。
古ちゃん(古川昌義)が、駆けつけてくれました。これで、完成です。
僕はしつこいのです。 - ASKA_burnishstone’s diary
しつこい!?ASKAさんのインスピレーションから、古川さんのガットギターが入った日。
ブログ開始後初めて、斜め後ろからのASKAさんと古川さんのモノクロ写真がUPされた。
この写真と同じものが古川さんの facebookにも「やっと会えました。 ^_^ 嬉しです。」の言葉と共に載っていて、
その後の、一木さん、古川さんのライブへの飛び入り参加の経緯からも、
仲間の温かさ、有り難さを感じ、焦げるほどに胸が熱くなった。
彼らの気持ちは、透き通る純粋さの中で繋がっている。
9月24日
歌詞に、
いまは昔 昔はいま 誰でもない自分さ
生きるように生きてきた めくれば文字が現れるように
こんにちは さようなら おはよう おやすみなさい
繰り返しながら僕はここに居る
sweet and good memories
ニューシネマパラダイス
と、いう一節があります。
気に入ってます。
http://aska-burnishstone.hatenablog.com/entry/2016/09/24/101015:title
これを読んだときは、正直この歌詞の意味を深く考えていなかった。映画『ニューシネマパラダイス』とASKAさんの歌がどう混ざり合うのだろう、早く全体を通して聴きたいな、というくらいで。
そして、今。
涙腺の強い私が、聴く度にこみ上げてくるものを必死にこらえるのは、まさにここ。
この部分だけは、平常心を保っていられない。
古川さんはいつもアーティストがどう表現したいのか、と歌の心を掴んで、歌の世界が最も伝わるようにと演奏する素晴らしいギタリスト。ASKAさんと一緒に音を創れることを心から喜んでいる彼のギターは優しく、本当に優しく、澤近さんのピアノと重なり、そして、ASKAさんの歌声がそこに加わる。
人の一生が表現されたこの歌、特にこの部分に象徴される円(縁)には、喉の奥がきゅうぅっとなってしまう。
転んでたった一人で立ち上がろうとしている時に、何も言わず寄り添ってくれたり、手を差し伸べてくれたり、そんな人たちの顔が思い浮かぶ。
最後の言葉は本当に自然な、心からの
「ありがとう」がふさわしい。
アルバムを通して聴いて13曲目の『しゃぼん』が終わり、エンドレス再生でまた1曲目の『FUKUOKA』が始まる時、
"アルバムは一つの円”というASKAさんの表現が実にしっくりくるほど、始まりと終わりが自然と繋がって一つになるのを感じる。
『FUKUOKA』は、
生きるということ、
過去、現在、未来への想い、
その中で出会う人々の温もり、優しさが詰まった、
ずっと先まで寄り添ってくれる、
誰が創ったのか、歌っているのかさえ分からなくなるまで生き続けるであろう、
そんな歌だと思う。
YouTube 『FUKUOKA』より