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ASKA new album を聴く。02.「Be free」

胸が締めつけられるような、絶望に泣いたあの感覚が拭えない人も、ファンの中にはまだまだいるのではないだろうか。

 

音楽や香りは記憶を蘇らせる力を持っている。良い思い出ならいいけど、苦しかったこと悲しかったことまでありありと姿を現し、その現象の前で大きく戸惑い、耳を塞いでしまう。

 

9月2日

明日は、ハーモニーです。

みなさんに聴いてもらったデモトラックの上に澤近氏のIQの高いストリングが乗る予定です。

「Be Free」のメインボーカルが終わりました。 - aska_burnishstone’s diary

 

この記事には、そんなファンの悲痛な想いもコメント欄には寄せられていた。

もちろん楽曲が新しい形で発表されることを喜ぶ声もあった。

 

2014年の4月に初めて聴いた時は、デモとはいえ完成度の高い、ASKAさんらしいなと思えるメロディーにすぐに惹きつけられた。

ただ清々しくのびのびとした、壮大なイメージのメロディーに反して、歌詞の方は、ここまで内面をストレートに吐き出したものは初めてなんじゃないか、と思うほど、ASKAさんの苦悩が表れているようだった。

 

 

もうその時には、私の中では、ASKAさんに何かとんでもなく大変な事が起こっている、ということは感じていたから、歌詞はASKAさんの告白を聞いているようで、聴きながらどうにもやるせない思いに包まれたのを覚えている。

 

ファンの中には「ASKAさんが夢に出てきた」という人が結構いるように思うけど、私の夢の中には、ASKAさんはおろか、自分の身近にいない人はほとんど出てこない。

夢なのに、なんだか現実的なのが淋しい…。

霊感みたいなものも、信じている割に体験はゼロ。鈍感なんだろうな、きっと。

ただ一度だけ、2013年 CHAGE and ASKAの復活ライブの延期が決定してすぐ後の、6月か7月くらいに、突然ASKAさんが夢に出てきたことがある。

その当時、寝ても覚めてもASKA、と考えていた訳ではなかったのに、あれは一体どうしたことだったのだろう?

とにかく夢の中のASKAさんは、私の家の近くの (実在しない) ひなびたホテルの廊下に座り込んでいて、すっかり投げやりというか、うなだれた様子で…。

こんな遠くまで来ていたとは、やっぱり今辛いんだね、と夢なのに、何故か真剣にそう思った。

「チャゲアス再始動ライブの延期」を淡々と自身のラジオで伝えるChageさんの声が、あまりにも悲哀に満ちていたのを感じ取っていた後ということもあって、ASKAさんの身に何かとんでもない大変なことが起こっている、ということは、それではっきりした。

もちろん誰に公言するわけでもないし、とんでもない大変なこと、は具体的にはっきりしないにしても、

ただただ心配で、

願わくば、大事になる前に何とか解決できますように、そんな気持ちだった。

 

私の勝手に見た夢と現実 (C&A再始動延期、ASKA活動自粛) と、その後の報道。そして逮捕直前の「Be Free」。

 

「Be Free」の歌詞は、その流れから私にとっては、とても衝撃的な、ASKAさんの心情そのままに思えた。

この時期にこんなことを歌っていいのか、と余計な心配までした。

出だしのフレーズからすでに苦悩は溢れていて、以前夢で見たASKAさんの姿と重なって、絶望的な気持ちになった。

特に、繰り返される

「自由になりなさい 楽になりなさい 誰かにそんな風に 言ってもらいたい」

この部分は、

誰にも分かってもらえない、こんなにも追いつめられているのに。

苦しくて苦しくてしょうがない。

罪を自白するわけにはいかないけど、嘘はつけない。

そういうASKAさんの心の叫びとしか受け取れなかった。

この「Be Free」を最後に、2016年1月に発表されたブログ「700番 第一巻」まで、判決後の公式な文章を除くと、ASKAさんの直接の声というものは届かなかった。これは最後の新曲だった。

 

この永遠に続くかもしれないと思われた闇の中、

ASKAさんの心境を知ろうとこの曲の意味を考え、

胸が張り裂けそうになりながら聴いた日々。

 

そんなことを思い出すと、どうしても「Be free」には重苦しい気持ちと重なってしまう、というのはよく分かる。

 

この時期を思い返さずに、この曲は聴けない。

 

ただ、ASKAさんがあえて、この曲を「FUKUOKA」の後、2曲目に持ってきていることからも、

今は、

「苦しんだ自分も認め、受け止めて、前へ進む」

という、新しく前向きな姿勢をこの曲から感じる。

本当にどこまで強い人なんだ、ASKAさんは。

 

人の過ちは許せても、自分の過ちはなかなか認めることも受け入れることも難しい。

なかったことにしてしまいたいのが、人情だ。

そうでもしないと前を向けないくらい落ち込んでしまうから。

それを、ASKAさんは新たなアレンジを加えてより壮大に、歌詞もほんの少し変え、改めて「Be free」として世に出すことで乗り越える。

 

曲自体からは、大空の下、オーケストラや合唱シーンが映えそうな、堂々とした光のイメージを抱く。

それなのに歌詞の方は、ほんの少し変えたとは言え、どうにもならない心の闇を表したままだ。

 

この両極端なイメージは、

後半「強く強く抱きしめたい そんな人がいる 生まれたての光を 今日という日々で」

という部分の前向きな歌詞で調和がとれていく。

闇から光へ。

そしてこのすぐ後の間奏部分で、「be free,  be free,  be free,  be free  ……」と畳み掛けるように歌われ、一つの場所に行き着く。

デモの方は2回のみだった「be free」のコーラスが、もっと強く主張を持って訴えかけてくる。

そしてこれは私の聴き間違いかもしれないが、繰り返される「be free 」と重なるように「アハハハハハッ」と笑い声が聞こえてくる…、ような気がする。

その声は、苦しんでいたこの頃の自分を笑い飛ばしてる、もしくは例え苦しみは続こうとも乗り越えてみせる、ようやく自由を手に入れられそう、そんな風に想像できて、

一気にメロディーのイメージと一体化し、晴れ晴れとした歌となる。

 

あくまでも勝手な解釈ではあるが、そうするとこの一曲で一つの円が綺麗にできる、そう思えて気持ちよく聴けるのだ。

 

辛い思い出とセットになっていた音楽や香りも、

また新しく上書きするように、共に笑顔を重ねることで、

少しずつ辛かった印象は薄らいでいく。

そうしながら前に進むことで、

以前より強くなれる。

 

そしてそこから初めて、

真の自由が得られるのかもしれない。